営業・販路開拓
失注分析の進め方|理由が価格で終わるときの記録と改善
失注理由の欄に「価格」と入力する。入力は終わったのに、次の提案で何を変えればよいかは決まらない。安くすればよかったのか。価値の伝え方が足りなかったのか。そもそも、予算のない相手に提案していたのか。
同じ「価格」という二文字でも、必要な対応は違います。理由に名前を付けるだけでなく、次の営業行動まで決める。そこまで進めるのが、仕事に使える失注分析です。
01最初に分けるのは事実と解釈
失注した直後は、担当者自身も気持ちを整理しきれていないことがあります。そんな場で「なぜ取れなかったのか」と何度も聞くと、説明しやすい理由だけが残りがちです。
そこで、まずは記録の書き方を変えます。次は架空の案件の例です。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 相手の発言 | 今期はこの施策に予算を付けられない |
| 確認できた結果 | 今期の導入を見送り。競合採用の有無は不明 |
| 営業側の解釈 | 提案の優先順位が他の施策より低かった可能性 |
| 未確認のこと | 来期も検討しないのか、予算以外の懸念があったか |
| 次に変えること | 提案前に、予算を確保する時期と条件を確認する |
ここで「競合より高かった」と書き換えてしまうと、確認していない競合比較が事実として残ります。その記録を集めても、値引きが必要かどうかは判断できません。
相手の言葉はできるだけそのまま、担当者の推測は別の欄へ。理由が分からない案件には、「不明」という置き場所も必要です。
02失注と保留の線をそろえる
比較の前に、何を失注とするかを決める必要があります。連絡が取れなくなった案件、導入を見送った案件、競合を選んだ案件を、チームごとに違うルールで扱っていると、数字の差が営業力の差なのか、分類の差なのか分からなくなります。
HubSpotも、受注率を見る期間や、購入判断に至らなかった案件の扱いを一貫させることを説明しています。HubSpotの受注率の解説
たとえば運用上、競合採用と明確な導入見送りを失注、再検討の時期や条件が確認できているものを保留、と分ける方法があります。これは分類例であり、自社の商談期間に合わせて決めるものです。保留なら、再確認する日と担当者もセットです。
受注率を「受注件数÷受注と失注の合計件数」として計算するなら、対象期間、案件の範囲、保留の扱いを一緒に記載します。同じ期間の架空例で受注4件、失注6件なら40%。未決着5件を分母に混ぜる計算とは意味が異なります。
少数の案件では、1件の増減でも割合が大きく動きます。率の比較より先に、件数を確かめてください。
図で整理する
03価格をもう一段だけ具体的にする
「価格」を細かくしすぎると、入力に時間がかかります。最初は、行動が変わる程度まで分けられれば十分です。
- 予算額に収まらない
- 金額に見合う効果を判断できない
- 他社と比較して割高だと評価された
- 支払時期や契約期間が合わない
- 価格への言及はあったが、詳しい理由は不明
予算額の問題なら、提案前の条件確認や提供範囲を見直す余地があります。効果が判断できないなら、金額を下げる前に、導入後に何が変わるのかを説明する材料が必要かもしれません。支払時期の問題は、商品価値とは別の論点です。
ただし、この分類から原因を自動的に確定させないこと。相手の一言には、伝えやすさや社内事情も含まれます。記録が増えた段階で、商談メモや提案内容との照合も必要です。
04聞ける関係なら売り直しより振り返りを
理由を聞く機会があるなら、契約を取り戻す話と、振り返りのための質問を混ぜないほうが目的を伝えやすくなります。
今回のご判断について承知しました。今後の提案を改善するため、差し支えない範囲で一点だけ伺えますでしょうか。今回、最後まで判断が難しかった点はどこでしたか。
この質問に答えてもらえるとは限りません。回答を断られたらそれ以上求めず、分からなかったことも記録に残します。相手の説明を受けてすぐ反論すると、改善のために聞くという目的も伝わりにくくなります。
担当者が顧客から直接聞いた理由と、営業側だけで振り返った理由も区別しておくと、後で判断の根拠をたどれます。
05次の商談で変えることは一つに絞る
振り返りで「ヒアリングを強化する」と決めても、翌日の商談はあまり変わりません。具体化したいのは、変える場面と質問です。
たとえば、予算の条件を最後まで確認できなかった案件が続いたなら、次の対象案件では提案前にこう聞く、という形です。
この施策を進める場合、予算はどのタイミングで、何を材料に判断されますか。
改善シートには「試す対象」「変える質問や資料」「確認すること」「振り返る日」を一行ずつ書きます。結果を見るときも、すぐ受注率だけで採点するのは早計です。まず確かめたいのは、予算判断の条件を提案前に確認できたかどうか。受注への影響は、案件数や商談期間を踏まえて後から確かめる必要があります。
担当者、流入経路、商材が大きく違う案件を一緒にして結論を出すと、別の要因を改善効果と取り違えるおそれがあります。比べる対象は、できるだけ条件をそろえてください。
06一件の失注から次の質問を持ち帰る
失注理由の欄を埋めるだけなら、「価格」で終わっても困らないかもしれません。けれど次の営業を変えるためには、その二文字の内側を少しだけ見る必要があります。
今日できるのは、直近の一件について「相手の言葉」と「自分の解釈」を分けること。そこから、次の提案前に聞く質問を一つ決める。振り返りの成果は、反省の量よりも、次の商談に持ち込める違いに表れます。