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利益と資金繰りの違い|売上が増えても現金が足りない理由と営業の確認項目

「今月、大きな案件が決まりました」。営業会議では拍手が起きた。ところが月末、経理から届いたのは「この仕入れ、先に支払うのですね」という確認だった。

売上が立つことと、銀行口座にお金が入ることは同じではありません。利益が見込める案件でも、入金より支払いが先なら、その間をつなぐ資金が必要です。

営業が資金調達まで引き受ける必要はありません。ただ、受注額と同じくらい「いつ、何が終われば入金されるか」に関心を持つ。今回は架空の案件を使い、商談中に確認できることを整理します。

冒頭の場面、金額、日付、会話例は編集部が作成した架空の例です。実在企業の事例ではありません。基礎情報は2026年11月5日時点で確認しています。

01利益と資金繰りは、違う問いに答えている

利益は、一定期間の収益と費用の差を見るもの。資金繰りは、支払う時点で必要なお金を用意できるかを見るものです。日本政策金融公庫の資料でも、売上代金の回収と仕入代金の支払いの時差が、利益と資金を一致させない要因として説明されています。[1]

混同しやすいのが、売上、粗利益、手元資金という三つの数字。「120万円の受注」は、そのまま120万円の利益でも、今日使える120万円でもありません。売上から売上原価を引いたものが粗利益であり、そこから人件費などの経費も考える必要があります。

一方、手元資金を確認するには入出金の日付が欠かせません。受注一覧が金額順に並んでいても、それだけでは月末の支払いを判断できない。営業の表と経理の表が食い違うのは、どちらかが間違っているからとは限らないのです。

02粗利益40万円なのに、手元資金は80万円減る

ある商品を11月に販売し、同月の売上を120万円、売上原価を80万円として計上するケースを考えます。仕入代金80万円の支払日は11月末。売上代金120万円の入金予定日は翌年1月末です。

単純化のため、ほかの取引、経費、税金、借入、利息は含めません。売上計上の条件を満たしたと仮定した説明例であり、実際の会計処理や契約条件を示すものではありません。

  • この案件の粗利益:120万円−80万円=40万円
  • 取引前の手元資金:100万円
  • 11月末の支払い後:100万円−80万円=20万円
  • 翌年1月末の入金後:20万円+120万円=140万円

最後まで進めば、手元資金は取引前より40万円増える計算です。しかし11月末から入金までに使えるのは20万円。粗利益40万円があるからといって、その40万円を11月中に別の支払いへ充てられるわけではありません。

図で整理する

架空例。売上120万円、原価80万円で粗利益40万円。手元資金100万円は11月末の支払いで20万円になり、翌1月末の入金で140万円になる
経費・税金・その他の入出金を省いた編集部の試算。利益と現金の動くタイミングを比べています。

現実には、この間も給与や家賃などの支払いが続くはず。だからこそ、案件の粗利益だけで安全かどうかを判断しないことが大切です。

03受注が倍になると、先に必要なお金も増える

同じ条件の案件を同時に二つ受注したらどうなるでしょう。売上は合計240万円、売上原価は160万円、粗利益は80万円。数字だけを見ると、喜ばしい成長です。

ところが、手元資金が同じ100万円なら、11月末の支払い160万円に対して60万円が不足します。翌年1月末に240万円入る予定があっても、その前の支払日に間に合わない。二つ目の受注が悪いのではなく、増えた取引を支える準備が必要という話です。

ウリノビでは、こうした案件ほど「受注できそうです」という早い段階で共有することを勧めます。確定した売上として扱うのではなく、資金が動く可能性のある案件として経理へ知らせる。受注後に初めて支払条件が分かるより、検討の時間を残せるからです。

対応策は会社の状況と契約次第。営業担当者が独断で入金を前倒しすると約束したり、仕入先への支払いを遅らせたりするものではありません。条件を把握したうえで、経理・責任者と判断する順序を守りましょう。

04商談でそろえたい五つの確認

「月末締めです」と聞いて安心してしまうと、話が途中で止まります。何の完了をもって締めに入るのか、請求書はいつまでに必要なのか。相手の社内処理まで確かめて、初めて日付の見通しが立ちます。

  1. 納品:何を、いつ、どこまで届ければ納品完了か。分割納品の扱いも確認。
  2. 検収:誰が何を確かめて受領を認めるか。予定日と、未完了時の連絡先を記録。
  3. 請求締め:対象月に含まれる条件と、請求書の提出期限・提出方法を確認。
  4. 支払期日:「翌月払い」だけで止めず、想定される具体的な入金日を確認。
  5. 未確定事項:分からない点を誰がいつまでに確認するか。回答待ちは回答待ちのまま残す。

例えば、商談メモには次のように書けます。

納品予定11月20日。検収担当は購買部のAさん、完了予定日は確認中。11月分の請求に含める条件を営業担当が11月10日までに確認する。入金予定日は契約条件を経理と照合したうえで確定する。

空欄を都合のよい日付で埋めないことがポイントです。「今月中に何とかなると思う」と「相手に確認した日付」は別の情報。見込みであることが分かれば、社内でも余裕を持った検討ができます。

05営業と経理の会話を、案件の途中につくる

毎回、全員で長い会議を開く必要はありません。まずは自社にとって金額の大きい案件、通常と異なる支払条件、検収が複数段階に分かれる案件など、早めに相談する条件を決める。それを営業側の共通ルールにしておく方法があります。

相談するときは、案件名、金額、先行する支払い、入金予定、未確定事項を一枚にまとめると話が進みやすくなります。会社全体の資金残高や資金調達の判断は経理・責任者の領域。営業は取引条件と相手の進行状況を伝える役割です。

今週の案件を一つだけ選び、「受注予定日」と「入金予定日」を並べてみてください。その間に何が起きるのかを説明できなければ、次の商談で聞くことが見えてきます。

売上をつくる力に、入金までの道筋を確かめる習慣が加わる。経営の数字は、その瞬間から営業自身の仕事とつながります。

参考[1]:日本政策金融公庫「経営Q&A 経営者が知って得する税務講座~上手な資金繰り方法~」(2018年7月)。利益と資金の違いの確認に使用。本文の金額・場面・確認メモは編集部作成(2026年11月5日確認)。

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